
ダコタはヌケサク飼い主が
働き盛りの30代に飼い始めた
放棄犬である
腐ってもプードルと密かに
(飼い主に)呼ばれているが
その名に恥じず、
一週間でトイレを覚えた
それなりに賢い犬である
病気も特にせず
食べすぎによる胃腸炎以外は
すこぶる好調だし、
一日のうち10時間を留守番させても
粗相もいたずらもない
以前保護した犬が来たときは
その犬にいじめられこそすれ
いじめることはなかった
自分が寝ているときに
隠れて噛みつかれたりしても
ずっと耐え忍んでいたのを見て
この犬だけは天寿を全うするまで
何とかして守ろう
と思ったものだった
ところが、自分は彼女を自らの都合で
マレーシアに来れてきた
ペットインキャビンは
大韓航空しか提供がなかったため
彼女を航空機で連れてくるのに
乗り継ぎ便で
ほぼほぼ15時間程度かかった
預け荷扱いにせず、
キャリーバッグで連れてくるのが
唯一の方法で一番安心だと思ったのだが
結局飲まず食わずの
苦行を味わわせてしまう
もちろん
ソウルでの乗り継ぎの際には
身障者用トイレで用を済ませたり
水を飲ませようとしたが
彼女はどうしてもトイレをしなかった
おそらくその10数時間で、
彼女はずっとトイレを我慢しなくては
ならないと勘違いしてしまったのである
フライトの後は
依頼していた犬の輸出代行の業者に
迎えに来てもらったが
そのマレー系の業者は
目的地に着くまでに
車を止めてトイレ休憩を作ってくれた
だが、ダコタは真冬の日本から
常夏のすっかり違う環境に連れて来られて
萎縮したのか、トイレをしようとしなかった
多分、できなかったのである
仕方を忘れてしまったかのように
で、すっかり混乱の末
彼女は結局
飼い主が一番避けてほしかった
ステイ先の家のベッドで
用を足してしまう
叱られなかったものの、
自分が真っ青になってしまい、
家のオーナーに謝っている様子を見て
そのトイレが最高にまずかったと
いうことを感じ取ってしまい、
結果、その後は頑として
建物内での用便はしなくなってしまった
その後KLで一人暮らしが
できるようになり、
日本においてあった彼女のトイレを
持ち込んだり、
あの手この手で
トイレを思い出させようとするが、
日本の家で12年間、
100%失敗なしの
トイレをしていた彼女も
もう同じトイレであろうと
部屋内で用便をしようとは
しなくなっていた
散歩のときだけがトイレタイム
朝の七時と夜の七時
この二回が彼女のトイレタイム
仕事に出ている自分が
その前後なんとか連れていける
時間帯だ
でも、ほとんど土足みたいな
日本よりも細菌も湿気も多い生活環境で
寝起きすることになった彼女は
加齢もあって膀胱炎を発症した
日本ではなかったことだった
日本では水をガブガブ飲み、
彼女のいつでも好きな時に
家の中のトイレで用を足すので
何の心配もしていなかった
家を汚してもいいから
掃除ならいくらでもするから
したくなったら家の中で
いつでもしてくれないだろうか
今の最大の願いは
そんなことかもしれない
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