
銀座のホステス、
おかまバーの黒服、
キャバクラのカウンター
今までにした夜の仕事
昼の正社員の仕事でリストラされて、
お金が欲しくて始めた
派遣の仕事だけだと打ち切りにあったとき
心細いから
そんな理由だった
どこの店に行っても場違いなくらい
硬い自分は苦労もしたけど
得もした
どこに行っても自分のようなチキンでも
認めてくれる人がいたから、
マイノリティに属するとニーズは高かった
でも、やはり競争社会なので、
持って生まれたものだけ武器にしても
努力がないと
どこに行っても変わらないな
これがまず一点、学んだことだった
あるとき、おかまバーで黒服を着て
カウンターに入っていたら、
「あんた、どっち?」と男性客に訊かれた
男か女かどっち?である。
女役は男性の皆さんにお任せしている店である。
自分は言ってみれば黒子
陰に入る役割で店の華ではない
質問に対し曖昧に笑っていたら
いきなりその客に強く胸をつかまれた
途端、一時に頭に血が上って
思わず客に殴りかかろうとした
その瞬間、店のママ(男)に
後ろから羽交い絞めにされた
「マサヒコ!やめなさい!!!」
(誰がマサヒコだよ…)
ママの機転でその場は丸く収まったが、
そのあとこっぴどく叱られた
「あんたね、誰があたしたちの給料払ってくれてると思ってんの!!」
そのあとママが完璧に男で、
仕事のためにフリで女役をしていることを知った
中途半端な自分が恥ずかしくなった
どこの世界にも真剣勝負な人がいて
ちょっとやそっとじゃ太刀打ちできない
これが二つ目の学びだった
夜の仕事はお金はいいが、
律儀な人間はついもらった分を
もらっただけ返してしまい、
手元に残らない
いわゆるあぶく銭は身につかないというやつだ
そんなわけで三つの当たり前すぎるかもしれない法則は
夜のお商売で教えてもらった
自分には風俗はしなくていい経験かもしれないが
(そこまでのサービス精神はないから)
夜の商売はやってみてよかったと思っている
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