
もらった
7本の
モルヒネを
安楽死の
朝の11時までに
均等に
使えるよう
計算して
打っていた
でも彼女は何度も泣いて
でももう私は泣くこともなく
「もう少しでこの苦しいのも終わるよ
おじいちゃん(私の父)も
待っているから大丈夫
痛いのも苦しいのもなくなるよ
ごめんねもう少し待ってね」
その言葉ばかり繰り返した
でも今しか伝えられなような気がして
正直にこうも伝えた
でもあなたがいなくなると寂しいなあ
ほんとうに悲しいよ
ずっと15年半もよく一緒にいてくれたね
あなたは自由になれるけど
私は怖くて寂しくてまた一人だよ
でも朝になると、彼女の苦しみにも
もう終わりがくると安堵していた
クリニックに行くにはGrabを
使うしか他に方法はなかったが
犬を連れている事がわかる可能性は
かなり高かったので
初めから事情を説明して乗ることにした
二台の乗車拒否の後
親切な中華系の男性ドライバーが
了承してくれた
おかげで体が突っ張ったまま
キャリーに入りきらずにいる
彼女を隠す必要もなく
クリニックに連れていけた
ドライバーは気の毒そうにして
心配してくれたし
心底ありがたいと思った
クリニックに着いて
挨拶をするなり
医師は診察台に乗せたばかりの
犬の後ろ足にいきなり注射をした
その途端、痛みではなく
フッという感じで
彼女の緊張が溶けたのがわかった
安楽死の薬は弛緩剤である
彼女のあれほど硬ばっていた体が
ふわっと解けるように
以前の私いの知っている
柔らかい体に戻った
「しばらく時間をあげるから
準備ができたら言って」
そう医師は私に伝えて部屋を出た
私はその時点で彼女を抱きたくて
仕方なかった
ずっと触れてなでさすりたかった
丸い体が今は元どおりそこにあるのだ
しかも潤んで綺麗な目は
もう苦しんでおらず
私をまっすぐみている

今見ると悲しいがその時はとても綺麗なものをみていると思った、その眼
抱き上げて以前のように
抱っこしてやると
以前のような反応はなかったけれど
柔らかく暖かい彼女の体は
すっぽり何の抵抗もなく
私の腕に収まった
ああ嬉しい
5分ほどそうしていたろうか
彼女はもしかしたら
まだ苦しかったり痛かったり
するのかな?
そう思うと、
もう決断しなくてはと思った
医師にお願いしますというと
彼は今度は彼女の前足に注射をした
これで本当に最期だった
開いている彼女の綺麗な目から
すうっと光が消えるような
そんな感覚があって
そのまま彼女は遠ざかって行った
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