
犬の首の
腫れは
人肌で
触れた際に
熱い!
と感じる
程度に
熱を
持っていた
そして
何より
飼い主を
心配させたのは
あれほど貪欲に何でもかんでも
食べたがった犬が
全く食餌をしようと
しなくなったことだった
ドッグフードは一粒たりとも
残しはしなかったし
野菜の切れ端だろうと
なんでも口に入るものは
食べてしまいたがったその犬が
肉を見ても見向きもせずにいる
いつもの獣医に連れて行き
首の腫れを見せた途端
インド系の獣医の顔色が曇った
たった4日ほどで
その首の腫れはあまりにも
歴然と大きくなっていたし
その腫れの中心には
何か硬い、炎症とは別のものがあった
医師は訊いた
「この犬は何歳だったっけ?」
15歳だというと医師は
落胆を隠せない様子で言った
「できるだけ早く病院に行った方がいい」
私は幾度か犬と病院を訪れていたが
犬を研究対象としてしか見ていないのでは
と思うほどの素っ気無い対応や
個々の患畜の飼い主の事情なんか
構っていられないのだといった
医師達の対応に失望していたので
「ここから検査機関にサンプルを
送って検査するとかできませんか?」
と医師に頼んだ
しかし医師は
「残念だけど、病院に行くことを勧めるよ
ここからは遠いけど大学病院とか
そういうところに行くのは?」
といくつか候補をあげた
この時、私はまだマレーシアの事情が
よく飲み込めていなかった
この国ではクリニックとホスピタルは
完全に役割が異なっており
また権限も違うようで、
私がかかっているクリニックにおいて
手術をしたりなどはあっても
検査や特定の薬剤の処方は
できないのなどの事情があったのだった
このことが後に、私を激しく後悔
させたり、悩ませることになるとは
その時の私には予想もしていなかった
この頁続く
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